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ブロンド司書の転落 第3章

月曜日―ゆっくりと週末を過ごしてすっかり元気をとりもどした
ブリジッドのいつもと変わらない一週間が始まった。いつもと変
わらない、そう、その日の午後までは・・・
午後4時を廻ったころ郵便物の分配があった
「はい、これはブリジッド、君にだ・・おやなんだかえらくかさ
ばるな・」
同僚から何気なく大型封筒受け取ったブリジッドは、送り主が
「中世研究会」となっているのに引っかかった。すぐに開けた
かったが、なにやら胸騒ぎがしたので、しばらく机の上に放置して
やりかけの仕事を済ませてから、そっと開封してみた。

 悲鳴をあげたり、気を失わなかったりしなかったのが不思議な
くらいだった。そこにはビデオの他に、多き区引き伸ばされた写真
が入っていた・・・・裸でビデオブースに座っている女の写真―
まぎれもなく、金曜日の自分の姿だった。ブリジッドは頭が真っ白
で、ほとんど放心状態だった。時間が停止したように思われ、何も
聞こえなかった。
その時、目の前の電話がならなかったら、いつまでもそうしていた
かもしれない。
091201.jpg

「どうしたの、ブリジッド、電話よ」
同僚の声にはっと我にかえったブリジッドは、震える手で受話器を
取り上げた。
「はい、こちらは市立図書館。私は司書のブリジッド・マルティン
です。何かお役に立てることがありますか?」
受話器の向こうから、聞き覚えのある声が聞こえた。やや甲高い
少年の声だ。
「俺たちの最高傑作をみてくれたかな?ベイビー。おっと余計な事は言わ
なくてもいい、聞くだけにしといた方があんたのためだぜ。」
ブリジッドは息を呑んだ。
「あなたたちなのね。」
「覚えていてくれてありがとう。あんたなら必ずビデオを見る、見れば
面白いことが起こる、と予想はしていたんだが、期待をはるかに上回る
燃えっぷりだったな。ほら、そろそろ何か返事をしないと周りから怪し
まれるぜ。」、
電話の向こうの声は言った。
「わ、わかりました。」
ブリジッドはあたりを見ながら答えた
「それで、何がお望みなのですか?」
「ふーん。あなたが冷静でいてくれて嬉しいよ。もともと警察に通報する
ほど愚かだとは
思わなかったけれどね。しかしそれにしてもずいぶんと性急な言い方
だね。とにかく会って相談したいのだが・・・一般的にはデートという
のかもしれない」
思わず受話器をたたきつけたい衝動をおさえつつ、ブリジッドはたず
ねた
「あなたが望むのはそれだけですか?」
「そう、今のところはイエスだ、ブリジッド。でも、衣服には注文がある。
まずまっすぐ家に帰るんだ。5時30分には郵便屋が俺たちが選んだ素敵
な衣装のつつみを届けにくる。着替えたらすぐ、隣町のステーキハウス
ハウスに行くんだ。知ってるだろう?あのチェーン店だ。一番奥のテーブルに
座るんだ。飲み物を注文して、大人しく待ってな。俺たちの代理人をいか
せる。約束の時間は6:00.きっかりだ!余計な衣服を着用していたり、5分以上
遅刻すれば、そこに送ったのと同じか、それ以上に情報がつまった封筒がた
だちに図書館委員会へ送られることになる。そうそうデイリーイクサイト社
にもな。知ってるだろ、あのエロ新聞。たぶんあんたの写真がデカデカと
一面をかざることになる」
電話は突然切られた。
0912002.jpg


受話器を戻したブリジッドはしばらく震えを感じたが、とにかく落ち着か
なくては、と深呼吸をしてどうにか気持ちを抑えた。
「どうかしたの、顔色が蒼いわよ」
突然主任司書から声をかけられ、ブリジッドははっとした。
「だいじょうぶです。ちょっと自動車の調子が悪くて・・すみません、今日は
修理工場によるので早めに帰らせていただきます」
「あらそれは大変ね。いいわよ。何か困ったことがあったらなんでも相談し
てね、本当よ。」
肩を軽くたたいて、主任秘書は机にもどった。ブリジッドにとっては最悪の
電話だったが、誰か別の職員が最初に電話をとった時に予想される事態より
はずっとましだった。

(あの写真はどうやってとったんだろう??この角度だと天井から写したと
しか思えないけれど・・)
口実を見つけてビデオコーナーに急いだブリジッドだったが、天井にはなに
も見つけることができなかった。しかしもし彼女が天井を近距離で丹念に探
したら、重いモニターを設置したあとが見つかったかもしれない。
あたりを見回して、そっとビデオデッキにテープを入れ、リモートコン
トローラーのスイッチを押す・・間違いなかった。そこには思い出した
くもないあの光景が写っていた
(わからない・・・あの少年たちが全部これを仕組んだってこと?)

いずれにせよ、事態は少年たちを責めてもどうしようもないところまで進ん
でしまったことは確かだった。誰にも相談できないし、警察なんかはとんで
もない。自分ひとりで解決するしか道はなさそうだった。ブリジッドはス
イッチを消して自分のデスクに戻った。

 なんとか集中しようと思ったものの午後の仕事にはミスが多く、自宅に
ついたのは午後5時30分になっていた。居間の椅子にすわって一息ついた
とたん、ドア・ベルが鳴り、立ち上がってドアをあけたブリジッドの前に
小包みを持って立つ郵便配達人をいた。配達人がドアを閉じて立ち去ると
同時に玄関をロックすると、ソファーにパッケージを置いて解き始めた。
赤いナイロン・スリップ・ドレスに赤のレース・ビキニショーツ。そして
ブラジャー、腿の半ばまでのストッキング、ハイヒール、バック、すべて赤。

0912003.jpg

すべてはぴったりだった。まるで測ったように・・・
体の中を小さな戦慄が走るのを感じた。 しかし残された時間は僅かだった。
ブリジッドはシャワーを浴び、髪をセットしてから「デート」のために
服を着た。
「これが私?」
鏡の前にはまったく別の女がいた。

警察に通報せず、自分の過ちを秘密にしておくためにある程度の金銭を払
うことを決めブリジッドは自分自身を鼓舞するように言って車に乗り込んだ
「さあ、これからが勝負よ、元気を出さなくっちゃ!」
しかしその元気も長くは続かなかった。
ステーキハウスに着いたのは6時10分前だった。ウエイトレスや、客たちの
あからさまな軽侮の視線を意識しながら指定されたテーブルに向かった。ここ
は午後7時からバーコーナーになるために、観客のほとんどは男性で、すで
にアルコールを飲んでいるものばかりだった。ジンジャエールを注文したブリ
ジッドはウエイトレスから確認を求められた。注文した飲み物を飲み終えて、
時計を見た。2分前・・

靴音高く、ひとりの客が近ずいてきた。
「ご一緒してもよろしいですが、ブリジッドさん」
ブリジッドは驚いたように眼を見張りながら、震える声で答えた。
「ええどうぞ、お待ちしていましたわ。」
「代理人」は初老の紳士だった。

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